大正・昭和の哲人 中村天風について

私が中村天風のことを知ったのは、戦前の日本を舞台にした軍事系の本で、日露戦争時代に軍事探偵(スパイ)として活躍し、九死に一生を得て帰還したと紹介されていたのがきっけかです(当時満州に派遣された113名の軍事探偵の内、帰還者は天風を含めてわずか9名だったとのこと)。
それから少し調べると、その後は肺結核に苦しみ海外放浪も経験した後、大正8年に、インドで修行したヨガと独自の経験を融合した「心身統一法」を創見し、以降は昭和43年に92歳で亡くなるまで講演などの流布活動に尽力したという経歴のようです。
最初私は、54年前に亡くなった「過去の人」と思っていましたが、その影響を受けたのは、大正・昭和の著名人などだけでなく、現在活躍中の大谷翔平選手も学んで影響を受けたという話を見てから興味を持ち、天風師本人が書いたものと講演内容を元にした本を数冊読んでみました。
内容は、人が幸せになるには、心と体を統一すること(心身統一)が大事で、特に心の方は、怒り・悲しみといった消極的な観念は持たないようにし、やればできるというような積極的な観念で満たすよう努力すべし、という点が印象的でした。
宗教については、何がしかのご利益を期待して神仏に祈ることは否定しており、あくまで心身統一法によりその人が持つ潜勢力を引き出すよう自助努力すべし、と説いています。また経営者については、健康や運命の扱いがしっかりできる人間でないとトップは務まらないので事業計画より先に人間を作れ、ということを言っており、考えさせられるところがあります。
私にとっては、日本にもかつてこんな哲人がいたのかというある種の新鮮さがあり、怒り・悲しみといった観念を全く持たないのも難しいとは思うものの、今後は可能な限り日常生活にこの心身統一法を取り入れていこうと思っています。

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